株式会社 山崎麻織物工房

古代より伝わる「能登上布」を守り続ける唯一の織元
蝉の羽のように薄く、涼しく丈夫で簡単に乾く麻織物

山崎 隆さん[代表取締役]


皇室献上品に選ばれる品質 昭和には県無形文化財に指定

明治24年、初代新左衛門が能登上布の紺屋(染め屋)として創業し、2代目新二が大正9年、能登上布の織元「山新」として起業、私で4代目織元になります。
ここ中能登一帯は古くから麻とのつながりが深く、崇神天皇の皇女がこの地に滞在した際に野生の真麻で糸を作り、地元の婦女子に機織りを教えたことが能登上布の起源であると言われています。この地で作られる良質の麻糸は近江上布の原糸として使用されていたそうで、近江より職工を招いて染織技術を学んだところ、織りの技術が格段に向上したそうです。そして文政元年(1818)年に初めて「能登」の文字を冠した「能登縮(ちぢ)み」が誕生し、その後たゆまぬ技術向上の努力が続けられ、皇室へも献上されています。
この頃から能登の麻織物の上質さが認められ「能登上布」という名称が定着し、昭和35年には石川県無形文化財の指定を受けました。昭和初期に織元は140軒を数え、生産量も年間40万反となり、当時の全国のトップの座につきましたが、徐々に減少し昭和58年には当工房1軒となりました。
「能登上布」は「蝉の羽」とも形容されるように薄くて軽く、麻の持つシャリ感とひんやりとした風合い、涼しく丈夫で簡単に乾く特徴があります。また、クリーニング等の必要がなく自宅で手洗いができる良さもあります。すべて手織りで、光沢のある糸を使用し、年間250~300反を生産しています。柄は200~300種類あり、織子は、現在12名で能登上布の魅力に惹(ひ)かれ県外から移住された方もいます。

着物以外の新商品を開発し新ブランドを立ち上げる

リーマンショックの影響で注文が2年間続けて半減したことを機に、着物以外の新商品開発を決意し新ブランドを立ち上げました。ブランド名は「RAMIE EPOCH(ラミーエポック)」で、ラミーは素材の麻、エポックは新時代という意味です。商品はストール、ノースリーブシャツの2商品を作りました。ストールの織りは、糸の密度を粗くすることで首に巻きやすいように隙間を広げ、手揉み洗いによるソフトな感覚に仕上げました。最初にストールを商品化したのは、男女を問わず幅広い年齢層(20代~60代)の方々に着用していただけるのではと考え、麻の特徴を活かし春から秋まで着用可能な商品に仕上げました。
また、これまでに、ブランドを拡げるため国内外の有名見本市に出展しました。特に昨年はドイツの「アンビエンテ」に、今年は世界のトップの見本市であるパリの「メゾン・エ・オブジェ」に出展しました。今後、織機の織り幅の拡大が必要で、生産数増加と品質維持が課題と思っております。織り幅が拡大できれば着物以外にも洋服、インテリア、シーツ等幅広い商品開発が可能になります。能登上布唯一の織元として、知名度を上げ、伝統を守り続けていく使命はもとより、日本だけではなく世界でも知られる企業を目指したいと思っています。

株式会社 山崎麻織物工房

■ 住所/〒929-1571 石川県羽咋市下曽袮町ヲ84
■ TEL/0767-26-0240
■ 代表者/山崎 隆
■ 創業/明治24(1891)年
■ 業務内容/能登上布の製造・販売

※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります