揚げ浜塩田 角花家
400年の歴史を誇る「能登の揚げ浜式製塩の技術」
重要無形民俗文化財に指定された技術を子から孫へ
「塩汲み3年、塩撒(ま)き10年」一人前になるまでの険しい道
珠洲市仁江海岸で、日本最古の塩田法である「能登の揚げ浜式製塩の技術」を守り続けています。慶長元年(1596)より以前からつくっていたと思われますので、おそらく400年は経っていると思います。現在、5代目の私と6代目の長男夫婦と3人でつくっています。
塩づくりの期間は、4月の下旬から10月の中頃までなのですが、途中、梅雨の時期もありますので、実質、半年弱です。
塩づくりには、「塩汲み3年、塩撒(ま)き10年」という言葉があります。海水を汲む作業について一人前になるのに3年かかり、砂の上に均等に海水を撒けるようになるまで10年かかるという意味で、その日の天候を見極め、砂の乾きを計算して撒くことが一番難しいところです。
塩づくりの1日は、先ず、海水を入れた2つの桶を天秤棒に通して塩田へ運ぶ作業から始まります。1つの桶に36リットルはいり、合計72リットルを1度に運びます。これが作業の中での1番の重労働で重さは75kgくらいになります。それを7回繰り返し塩田の上にある浜桶(しこ桶)に入れます。そして、その浜桶に入れた海水を砲弾型の桶で均等に塩田に撒き、午後になってから、塩の結晶に覆われ裸足の足が痛いほどの砂を沼井(ぬい=塩田の上にある砂を入れる木箱)に集めます。上から海水を注ぐと結晶が溶けて、最大7倍の濃度の「鹹水(かんすい)」が溜まります。
その「鹹水」を3日分もしくは4日分を巨大な釜で約3時間「あら炊き」をして冷まし、濾過(ろか)槽で不純物を取り除いたあと再び10時間煮詰めます。最初の「あら炊き」から約30時間後、揚げ浜塩の一番の特長である、粒が粗く味がまろやかでミネラル豊富な自然の塩の完成です。
連続TV小説「まれ」の影響で生産が追いつかないくらい多忙に
昔、このあたりは特に産業もなく、約30軒のほぼ全戸が塩をつくっていましたが、昭和33年頃には私の1軒のみとなり、平成5、6年までそんな状態が続いてきました。その後、規制緩和や自然塩ブームもあって塩づくりが復活し、業者が少しづつ増えてきました。製造方法も業者によって、簾や竹の枝に海水を散布し太陽と風で濃縮したり、海洋深層水を使ったりと様々です。今では、珠洲の海岸線は約10社が製法を競う「塩街道」になっています。
一昨年、NHK連続TV小説「まれ」の影響で多くの方から注文をいただきましたが、生産が追いつかずお客様に大変ご迷惑をかけました。3ヶ月くらい待っていただいたお客様もいらっしゃいます。父からは継いでくれとは言われませんでしたが、長男の宿命ということでそれまでの職を辞め、自然に気がついたら家業を継いでいました。この引き継いだ製塩技術が、平成20年に国の「重要無形民俗文化財」に指定されました。今後、息子から孫へと受け継いでいってくれれば言うことはありません。
揚げ浜塩田 角花家
■ 住所/〒927-1324 石川県珠洲市清水町1-58-27
■ TEL/0768-87-2857
■ 代表者/角花 豊
■ 創業/不明
■ 業務内容/揚げ浜式製塩・販売
※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります