松尾栗園
サラリーマンから能登栗生産者へ転身
能登で初めて「低温熟成」の焼き栗を販売
3ヶ月の研修だけで自信も勝算もないままスタート
高校を卒業後、家庭の事情で地元愛知県の会社に25歳まで勤めました。その後、自分のやりたいことを探し求めて上京し、東京の出版社に5年間勤めたものの馴染めずに退職しました。この頃より、都会でのサラリーマンよりも田舎での一次産業(漁業・農業)に強い憧れを抱くようになり、まずは漁師を目指しました。北海道でタコ釣り漁船に10ヶ月間乗船したのですが、毎日船酔いとの闘いで、さらに労働時間は1日19時間、休日は1ヶ月間に1、2日という過酷な日々に体力的な限界を感じ、同じ一次産業である農業へ鞍替えすることにしました。
農業をするにあたって、「ありきたりなものをつくるのではなく、田舎で珍しいものをつくりたい」との思いがあったので、インターネットの求人情報に「農業・求人・果樹・独立」のキーワードを入れて検索したところ、「独立の意志がある方限定で能登栗農家を募集中。研修期間は3ヶ月、土地代は無料」という案内が目に入り、最高の条件だと思い、研修先の農家にお世話になることにしたのです。3ヶ月間の研修内容は草刈、収穫、選果が中心で、あっという間に独立の日を迎えました。育苗、剪定、肥料時期等何も知らない状態で、自信も勝算も全くないままとりあえずスタートをしました。
恩人から習った焼き栗が予想以上の反響を呼ぶ
独立当初、日中は栗園で農作業をし、深夜はコンビニでアルバイトをして生活費を稼いでいました。そして待望の初収穫期を迎えたのですが、栗の単価が、kgあたり400円~500円くらいで、収穫量が500kgでしたので約20万円でした。すでに肥料代・農薬代で20万円を超えており、働いても赤字が膨らむだけでやっていけないと思い、この先どうすればよいかと頭を抱えました。
ちょうどその頃偶然に、東京の焼き栗専門店「くりはち」の社長さんが能登栗を仕入れるために来園されました。買い入れ価格はkgあたり800円とこれまでの倍の単価を提示していただきましたが、それでも生計が成り立たないことを話すと、焼き栗づくりをしてはどうかと勧められ、そこで「低温熟成」という方法を教えていただきました。こうして、私が能登で初めて「低温熟成」の焼き栗を販売したのですが、購入されたお客様はすごい衝撃を受けられたそうです。とにかく今まで食べた栗と全然違うと、地元や観光客の方々から予想以上の反響があり、500kgの栗がわずか1ヶ月で完売となりました。
今では遠方のお客様で、私の栗を買うためにわざわざ毎年10月に輪島へ旅行に訪れる方もいらっしゃるほどで、本当に嬉しいことです。今後も、畑に軸足を置いて、農家としてのレベルアップを図り、圧倒的に旨い栗をつくる農家になりたいです。
松尾栗園
■ 住所/〒928-0215 石川県輪島市町野町粟蔵ニ80-10
■ TEL/0768-32-1305
■ 代表者/松尾 和広
■ 創業/平成18(2006)年
■ 業務内容/能登栗の生産、焼き栗の製造・販売(輪島朝市や県内外物産展に出店、インターネット販売)
※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります