株式会社 ふくべ鍛冶

創業明治41年、奥能登で頑張る町の鍛冶屋
4代目は商品開発や移動販売で奮闘

干場 健太朗さん[4代目]


孫の代まで光って切れる ブランド名は「孫光」

当店の初代はお酒が好きで、お客様が仕事を頼みにくる時、いい品物を作ってもらおうと、お酒を持ってくる方が多かったことから、お客様の間で「ひょうたん鍛冶」、「ふくべ鍛冶」と呼ばれ、現在の店号を「ふくべ鍛冶」にしたと聞いています。
明治41年の創業当時は「鑑札」が必要な時代で、今も当時の「鑑札」を家宝として保管しています。当店は、ロープ・網切りから調理まで使える万能マキリとイカ専用の包丁に力を入れており、東京を中心に県外にも人気があります。昭和初期に宇出津で店舗を構えてから、行商は途絶えていたのですが、店頭まで足を運ぶことが困難なお客様のために、昨年4月から週2回、「移動販売車」での行商を始めました。他に月に1回、能登町天坂の「未知の駅能海山市場」と門前総持寺通り商店街で行われる「禅の市」にも出店しています。
県内に鍛冶屋は輪島市門前町の1軒と当店の2軒しかありません。海の道具、山の道具を作り、かつ店舗を構えて展開しているのは、当店だけです。海と山では用途が違うため形が全然違い、また同じ鍬であっても地域により形はそれぞれです。
ブランド名は「孫光」です。屋号の「孫衛門」から、「孫」を取って、孫の代まで光って切れ味が続いてほしいという思いを込めて、「孫光」としたそうです。私は、昨年の4月に12年間勤めた役場を退職して、4代目として家業を継ぎました。小さいころから鍛冶屋の後継ぎとして育ったのですが、いわゆる3K(きつい、危険、汚い)といわれる職業であったので、継ぐ気はありませんでした。
ところが、大学生の時、NPO活動で京都の町づくりに関わったことがきっかけで、地域を盛り上げたいという気持ちが起き、どうせやるなら故郷の町づくりの方がやりがいがあると考え役場に入りました。役場では伝統文化の継承支援や地域の宝を見直す仕事に携わり、外から家業を見たところ、残して伝え続けなければならない仕事だと強く感じ、継ぐ決心をしました。「刃物は一生もの」と言われるほど長く使える道具です。切れなくなった刃や欠けた刃、そして柄の取り替えに至るまでの修理を行っています。

養殖牡蠣の本場広島で商品開発のきっかけをつかむ

牡蠣貝を開けるための新しいタイプの貝開け道具を作ろうと、調査のために養殖牡蠣の本場である広島へ行きました。現地の牡蠣養殖業者の方達から、貝開けよりも養殖牡蠣を繋いでいるワイヤーを切るクリッパーが必要との切実な要望がありました。そこで当店の技術と広島の業者の技術を融合したクリッパー作りに取り組みました。まだまだ試作の段階であり、結果が出るまでしばらく時間がかかりますが、実用化され安定供給が可能となれば大口の得意先になります。移動販売車によるお客様へのメンテナンス、現場へ足を運んでの需要発掘、イベントなどでのPR活動と、県内唯一の「4代目町の鍛冶屋」として熱い思いを持ち続けたいです。

株式会社 ふくべ鍛冶

■ 住所/〒927-0432 石川県鳳珠郡能登町字宇出津新23
■ TEL/0768-62-0785
■ 代表者/干場 勝治
■ 創業/明治41(1908)年
■ 業務内容/金物鍛造、販売

※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります